総評
昨年度は六篇だったらしいのですが、今年度は残念ながらたったの二篇のみでした。応募規定によって三十枚以上は書かねばなりませんので、大変だなあとは思いますが、もっと多くの方々が小説を書く楽しさへ、積極的に挑戦して下さることを希望いたします。
さて二篇の小説ですが、物語性への着眼は二篇ともによいのですが、文章力にやや欠ける点があり、物語構成のあり方にもややの粗雑さが目立ちます。読者に対して作者自身が、登場人物を通してどの部分で何をどうアピールし、この主張をこのように訴えるのだという中心の部分が欠けると、読後感での余韻が乏しくなってしまいます。小説は読者に与える読後感が最も大切な点であって、ストーリーのみを羅列するのではただの文章になってしまいます。
応募頂きましたお二人様には酷評になりましたが、更にご精進いただいての来年度の力作をお待ち申します。
(瀬川欣一)