入選 花冷えの夜
西今町 角田祐子
近ごろ 夜の闇が
薄く 淡くなってきた
二十四時間営業のコンビニの照明
おそくまで走る車のヘッドライト
チカチカしなくなった路地の外灯
静かな闇がもっていた
思索 瞑想の時間も
どこかへ押しやられ
深い闇にうずくまっている
孤独とか沈黙の
心躍るような真のゆたかさに
目をこらしたり
耳をすませたりしなくなった
それでも闇は得体の知れない生きもの
ひっそりと何かをひそませ
何かをはぐくませている
自分の背後に
まとわりついている
ほの暗さも含めて
闇は
花冷えの空へ溶け出し
そのまま
遠く宇宙の闇へと
流れ続いている
チカチカしなくなった路地の外灯。この感性は秀れている。観念的思考が述べられているのが惜しまれる。花冷えの空へ、と記すうえは、咲き満ちた桜の闇を描いて欲しい。 |