入選 追悼と祈り
古沢町 松本みつ子
次の列車に間に合うかあ!!
貨物係の大きな声
両手を挙げ丸を示して合図する
ワム十五屯車に
軍需物資の積み込み
若い男性は戦争に
女子も総動員で積荷作業
茹る様な倉庫の中
誰もみな無口である
係の人がときどき時計を見る
唯黙々と それ以外何の変化もない
時間ぎりぎりで終了
封印をして車票を挿す
ワッセイ!! ワッセイ!!
本線近くまで貨車を押し出す
汗を拭きやれやれと思った矢先
空襲警報発令
早く早く誰かの怒鳴り声
パンパンパンパン
荷物の隙間に身を伏せる
グラマン戦闘機の低空銃撃
息のつまるような数分が過ぎた
紡績工場より火災発生
上空にはB二九の編隊
機体を銀色に光らせ
真白な雲の尾を曳きながら
名古屋方面に向かっていた
あれから五十年余り過ぎた今も
鮮明に脳裏に浮かぶ
宇宙遊泳が放映される昨今
戦闘機の飛ばない穏やかな
大空であってほしい
何時までも清々しい
大空であってほしい
B二九は…名古屋方面に…、とあるが、では当時の作者の居所は何処であったのだろう、明記して欲しかった。空襲下の緊迫感は描かれている。 |