入選 野の花

下矢倉町 勝見久子


木枯らしの吹きすさぶ野路
霜枯れの草の中に
野紺菊が楚々と咲いている
畦径にかたまって咲く
赤のまま
淋しくなった野良に
誇り持ち咲いている
野の花
私は好きです

荒田の中にみぞそばの花が
遠き日食べた金平糖のように咲いている
そっと摘んで
野佛さまに供え手を合す
踏まれても刈られても
たくましく生きる
野の花
私は好きです

厳しい冬の寒さに
耐えて待つ春に
自然のなすがままに
美しい花を咲かす
蝶や蜂に密を吸わせて
野良仕事の疲れも労してくれる
野の花
私は好きです

天から与えられた命
短くても精一ぱい咲いて
静かに美しく散って行く
野の花
私は好きです


(評)
素朴な味わいが心よい。作者その人の、生き方の現れでもあるのか。二連目、荒田は休耕田としたい。常套語も多いのだが。


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