入選 季節の中で‥‥
犬上郡豊郷町 なみゆうじ
春の風は やさしく頬をなでて
足早に通り過ぎていく
「おはよう御座います」という
朝の挨拶は 不思議だ
まだ半分 寝ている私の脳を起し
シャンと背筋をのばしてくれる
春 どこも花に埋めつくされ
幸福な地上となっていく
幸福という その名のスポット
人としての世の中の見かたと
そして とらえかたでの相異
小鳥は空高く舞いあがりさえずる
私という欲望の魂も
空を見る 永遠に広がる
青一色に 己を知り
過去を流そうとする行為
おろかさとはかなさの人生
流転でのつかめるものとは
春のおとずれは 決して歓びだけか
すぐに 夏がやってくる
勝手なもので 私はやはり
熱風の中 自己の確立のために
颯爽と走り出す
秋 芸術家ぶって一枚のスケッチブック
衣がえする様に 街に自分を
探しに行く 宴の会の後に
手元にスケッチブックはなく
夜の店のマッチが一箱
冬 私の終局かいつしか限られた
範囲の中で 生を問う
幾つもの詩の主題が、一気に並んでいるようだ。冒頭一連目が良いと思う。 |