桜がゆ
義兄(あなた)が不治の病に倒れて半年
日一日と衰えを見せながらも
生ある事だけを信じているあなたに
今 私は
雪平に桜の塩づけをひとひら入れて
コトコトとかゆをたいています
米がかたちをくずしても
さらりと煮とけず
箸の先にまつわりつかぬよう
湯気がたっていても
のどもとを通る頃には
いっきに流しこめるような
かゆをたいています
なぞりたくない昔も少しはあって
内側で連なる悔いを
ほんのり紅色の上澄みから
苦みと一緒にのみこみ
遠くもないあしたが
別れの朝だとしても
ふっとひとふき
春色の湯気のあたたかさで
ほほえんで見せます
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