詩 市民文芸作品入選集
入 選

「点と線」
大藪町 寺田 すゑ子

算数のプリントは
いっぱいの点・点 点ばかり
点を線でつなぎ
いろいろな形や 大きさの違う
三角形と四角形を描いた
宿題に 目を通しながら
点と線で出来る 人の世の形態
その点と線とは何なのだろう………
ふと そんな想いがよぎり

点と点が 線と線で 結ばれて
親子の形になり
家族形にもなって
もっと大きなものを
形作りもしているのだとしたら………
−点は愛 そして 線は力−
と 思い込むようになって

ひとり生活の 老境の周りには
もう 点一つ 線一つ
だが 何の形も出来ないなんて
べそをかくことはない

しなやかに 一つの線を撓めつつ
たったの一点に 結びつければ
丸の形になるのだから
丸を拡大鏡にして こっそり覗く
興味津々の眼に
さまざまな世界が見えもして

明るくなった窓辺
柔らかな陽光に丸まり 今日も
四時間程“おばあちゃんち”の子になる
下校児をを待っている

「ただ今!」の声
ふんわり 丸は膨らむ


( 評 )
或る種幾何学的なものに作者は愛・力・家庭をおき、そこに撓めた形で丸の座をすえた。松本清張を思わせるような詩であるが孫をおくことでこの詩はやわらかい一ときの平和を得た。

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