詩 市民文芸作品入選集
入 選

少女
正法寺町 高井 豊

セーターの胸でリンゴをふいた
キュッキュッと音をたてて
真紅なリンゴと真白な歯とぶつかった
カブリとリンゴが小さくなり
あまずっぽい香とがすっと漂った

ブドウのふさをつまんでいた
ぽたりと落ちる涙と一緒に
一粒一粒とブドウが小さくなっていった
やがて枝だけが残り
悲しみがあたりに拡がった

塩水の中にイチゴが浮いていた
かわいい指がすっとのびて
イチゴの様な口唇にぽいっとほうりこんだ
青い茎がぽとりと落ちて
明るい笑いでいっぱいになった


( 評 )
あまずっぽい香、が全篇を被うようだ。それぞれの果実の質感に、心情の揺れが重ねられている。

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