詩 市民文芸作品入選集
入 選

もう一人の俺
普光寺町 寺田 源三

影法師許せ取得なき俺に
飽きもしないで着いて来た
後ろや前になりながら
愚痴も言わずこの日まで

 寒さ厳しい冬の日も
 暑さ凌いで夏の日も
 花見は宴果てるまで
 小雨に濡れつつ風に吹かれつ

影法師俺が眠りに就いたなら
破目を外して高らかに
鼾をかいてお休みよ
星の雫が落ちるまで………

 谷の瀬音が聞こえたら
 山に太陽覗いたら
 ぴっかぴかの朝なのさ
 今日も俺と離れずに


( 評 )
自己の影法師と対話する。発想の奇抜さ。斯く在りたい、の願望の切なさ。

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