詩 市民文芸作品入選集
特 選

ことづけて、三月
西今町 やまかみ まさよ

あしもとで
クロッカスが さいたのは
ほんのちょっと まえのこと

くちばしに
うすももいろのたよりを くわえ
もずが わかれにやってきて

なにもかもが
いちまいずつ さりげなく
ぬいでゆく きせつだけれど

わたしは あなたに
いつもより いちまいおおく
てがみを かこう

ふいにかるく かたをたたいて
とおりすぎていったのは
三月の かぜ


( 評 )
細やかな神経のはたらき。四連、いつもよりいちまいおおく/てがみをかこう の、ういういしい季節感が好ましい。

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