ごみ問題に関わって 「ほんに、ごみばかり増えて、これくらいお金も溜まるとよいのにねえ」とは、日頃ごみ出しにいって、顔をあわす近所の人達と、よく交わす会話だ。本当にごみはよく溜まる。収集の指定日が祝日と重なると、次のごみの日は収集箱から溢れ出して道路に迄積まれる。私も溜まったごみを出し、すっきりした気分になるのだが、集まったごみのやまを見るとき、此のごみの処分、それに携わる人達の事、汚染される環境に思いが及ぶと矢張り気は重い。 二月に入って小春日和の一日、ごみ処理、ごみの減量化、リサイクル等の取りくみに関わっている企業や施設を訪れ、見学する機会を得た。始めに行ったのは、京都長岡京にある有限会社コンパス。古新聞のリサイクルをしている会社だ。倉庫の二階の事務所にあがって、会社をたちあげた若い代表から話を聞く。パルプを少しも入れず、新聞古紙百パーセントを使って紙製品を開発、企画、製造、販売をしている。目標は理にかなった「循環型社会」を目ざし、新聞古紙を再度資源として活用、リサイクルし資源を有効に使って、ごみを減らす事を企業としてたちあげたのだ。 話の中で面白かったのは、たまたま新聞古紙を再生するための工場へ頼んだのだが、依頼された工場には、漂白する設備が無かったためにその手順をカット。出来上がった製品は白色でなくグレイの中間色、ソフトで感じの良い色の紙に仕上がったことである。漂白の手順をぬいた代わりに、汚泥も出ず人件費も省略、出来上がった作品は他紙にない個性的な色の製品、まさに「塞翁がうま」とはこのようなことを言うのだろうか。話を聞いた一同が、自分のことのように喜んで、改めてグレイの封筒を眺めたものであった。 倉庫の中にはグレイ一色の紙製品が積まれ、その色にふさわしいトレードマーク「新聞素材」の印刷もよく合うセンスの良い配色で、印刷された図柄もモダンで思わず「恰好いい」と呟いたら「グレイには黒や紺の色がよく合います。この印刷にはデザイン料をはずんだんですよ」と返ってきた。若いオーナーらしい運営の仕方に、明るく新鮮なものを感じた。 コストの方は中間の販売を経ず、その分だけ下げようと努力しているが、輸入されてくる中国製品にはとてもかなわない。しかし、品質の良さが分り、それで勝負する日も必ずくると思って頑張っている、と力強い。販売経路をひらく為にも、いろいろな壁にぶち当たり挫折を味わってきたが、「やる気さえあればなんとかなりますよ」の声に、創立当時は三人であったのが、六年たった現在、社員は六名、販路拡張や環境をまもる活動に、不景気で先が暗い現在の世の中に、明るい未来を覗いたような気がしたのは、私一人ではなく、参観者皆同じであったと信じている。 次に訪れたのは吹田市にある「資源サイクルセンター」愛称「くるくるプラザ」だ。ここは吹田市によって運営されている。破砕選別工場で小型複雑ごみ、大型複雑ごみ、資源ごみ、有害危険ごみ、燃焼ごみに分類、処理をしている大型ごみ処理施設である。 私共が参観している間にも、次々と大型車で運ばれてくるごみの中から、危険な物を取り除くのは現場の作業員だ。ほこりの中、マスク一つでやっていたが、健康面での安全さは考えてやられているのだろうか?と案じた。 又、リサイクル活動センターとして、陽あたりの良い各部屋に、自転車の修理、再生。衣服のリフォーム、牛乳パックから葉書、その他の和紙製品作り、ガラスエ芸、家具や木工の工房が用意されていた。市民が気楽に相談、利用できるようになっていて、私も記念に和紙の葉書一枚作らせてもらい、訪れた土産話の実証にと思いながらバックにおさめた。 いくぶん日あしの伸びた早春の陽をうけながら、バスの中で今日一日の研修旅行の事を貰ったパンフレツトで確かめながら、ふり返ってみた。始めに訪れた新聞古紙から、文房具、パッケージ等を開発、それを販売する企業をたちあげた若い人達、心からこれからの発展を祈る気持ちでいっぱいだ。しかし、吹田市需のあの膨大なごみを目の前にして、思った事は、ごみをもっと減らすことはできないのだろうか。各家庭が一寸気をつければ、ごみ減量につながり、ひいてはこの地球全体の環境がまもられるはずだ。 ごみ出しの会話が「生ごみは土に返してるのよ」「過剰包装の品物は買わないことにしているの」「買物袋はいつも忘れずに持っていくわ」「フリーマーケットを利用してるけど結構よ」などの情報交換の場になると、望ましいんだがなあ、と思いながら帰途についた。 |