<総 評>
本年度の応募総数は昨年度に比して約一割減となっていますが、過去三年間の平均値は年々増加の傾向にあります。こうして百人前後の方が投句されるということは、他にその数倍に及ぶ愛好者がおられるものと推察します。今回多くの応募作品を審査させて頂きましたところ、定められた入賞点数の二十三句は、いづれ劣らぬ秀吟で甲乙つけ難いものでした。しかし今回の冠題は易しそうですが類似句が多く見うけられました。なお出題のうち二題は動詞や助動詞が入っている為特定の付句(例えば「朗々と」では謡曲、詩吟など)に集中しやすく冠句本来の一題で他方向に目を移しにくいようでした。その点難解とも言える題に挑戦して、おゝらかでしかも品格のある句づくりをされたことに敬服いたしました。なかでも「贈り物」の題では自然界のほか無形の物をとり入れ句に巾を広げられました。
今後このように歴史ある冠句に応募され市民文芸をみんなで盛りあげて頂くことをお願いしながら総評と致します。
(藤野 畔子)
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永い間此の伝統ある彦根市民文芸の冠句部門の審査に御苦労頂きました松山花兄先生より、今年度より引かして頂きたいので、其の代りに未熟な此の私に勉強の為にぜひ共引受けてもらいたいとの強い御要望に預り、及ばず乍ら審査の一員に加えてもらう事になりました。御二方宗匠の御慧眼にはとうてい及びませんが、私なりに一生懸命選ばせて頂きました。九十四名の方々より寄せられました数多くの秀吟の中より選規に基き選衡し順位を付けさして頂きましたが、作品の内容に付きましては各句共に優劣の付け難きものでありました。
まだまだ選者として勉強不足で至らぬ所が多く見落した点もあろうかと思いますがお許し下さい。此の彦根地方に於ても長い伝統ある短詩文芸冠句界の輪を広げ、新しい息吹の元に人情味あふれる個性豊かな創作句が生れる様にお互いが精進する事を念願致します。
(野田 一路)
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竹山吟月宗匠の跡を継ぎ、冠句部の選をさせて頂く事になりました。彦根市民文芸作品入選集冠句の部が四十回を重ね、益々伸展をしてその道に精進をされ、趣味
の域を越えてよく冠題を咀嚼して、素養の高い視野の広い句が多くある事に感心をしました。
一層の御研鑽と御発展をお祈り申し上げます。
特選の三句は、気宇壮大で冠題をうまく捉え、世界の平和を願い天地の恵みに感謝し、古城盛衰の史に詠嘆の秀句と思いました。
(園田 鏡石)
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