詩 市民文芸作品入選集
選者詠

晩春
宇田 良子

すでにお役を果たしたのか
目の前のブレの来たテレビ
今日捨てようか
明日にしようか と
ふんぎりのつかないまま
リモコンを押している

すでにお役をすませたような
今の自分
明日あちらに行くのか
しあさって彼岸に立つのか
少しも動揺しなくなったのは
役立たずになった自分を
納得しながら見ているからか

どこかで
重くわびしい背中をはがし
最後の心臓が
打ちおわるのを聞いているのだ

窓の外には
今年の桜が散りかけている


もどる