詩 市民文芸作品入選集
特 選

deja vu
八日市市今崎町 辰巳 友佳子

そう
あれはどこだったろう
小高い丘に白いねこ
いっぱいに広がる草むら

そう
それはいつだったろう
昼間のような
いや午前十時過ぎ
春のような
初夏のような
いや梅雨期の晴れ間

そういや
誰かといっしょだったかもしれない
いや一人だったのか
それとも
シャムネコの眼を借りてその場を取り繕ったか

どこかで
イタリアンガラスが甲高く割られ
落札した絵がべらりと剥がされ

その白いねこは静かにしずかに
毛づくろいをしていて
ゆっくりとねこを膝に抱き
土粘土をこね
眼のないネコの首を描きながら


( 評 )
 新鮮な視点を感じる詩である。それは何時の事であったろうかと猫を中心に過去と現在を行き来している作者の一ときがよく分かる。
 只仏語の題名(既視感)を注として後記あればより読者の理解を得るのでは。

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