詩 市民文芸作品入選集
入 選

“あ”の字の魔法
池州町 真野 美栄子

苦手な うわさ話を聞いた後
理由なく イライラした時
ため息ついて 気がつくと
かきかた鉛筆を紙面に走らせている

心が綴れなく
思い浮かぶ単語を書き連ねる
ふさぎ込んだ気持ち そのまんま
とんがった いびつな文字の行進

そのうち 鉛筆の程良い
なめらかな書き心地が たまらなく
いつしか
ありがとう ありがとうって 書いている

“あ”の字が並び出すと
のつく言葉が 次 次と
表情つけて 踊り出す

あう あした あかるい あやとり・・・・・・

が まんまるい
あったかな あかりになる

不機嫌だった心が
“あ”の字に 隠れ
おだやかな気持ちが もどってくる


( 評 )
 単純な“あ”の字一文字でこんなに楽しい作品が出来上がる。詩を書く喜びとはこんなところにあるのだろう。

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