消滅
山道に小鳥の羽が落ちていた
薄ねずみに中ほどから濃いねずみ色
梅雨の中入りの木洩れ日が
重たく湿った枯葉の重なりに
いのちの熱を与えてやる時
一枚だけなら行き過ぎる
しゃがんで目を凝らす一回転してみる
三枚四枚五枚 はかなく羽は散っていた
付け根を下に先っぽを美人の眉みたく
美しくそよがせていた
耳を澄ませばちいちいちい ぴいぴいぴい
地鳴きとさえずりが楽しく聞こえる
生きる喜びに溢れてる
木々の花は終わり雨はたっぷり降った
新芽は風に撫ぜられ空に歌う
カラスかキツネかタヌキかイタチか
羽五枚で僕には判るドラマが判る
可憐な野の鳥にも訪れる死
お前は幸せな一生だったかい
美しい羽を五枚ポケットにしまった
僕は空を見る雲を見る
クヌギのざらざらを叩いて
ばんばんばん 可憐な小鳥の消滅を
空と雲と風とそして僕とが
心を込めて弔ってあげる
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