詩 市民文芸作品入選集
入 選

消滅
日夏町 小林 勝一

山道に小鳥の羽が落ちていた
薄ねずみに中ほどから濃いねずみ色
梅雨の中入りの木洩れ日が
重たく湿った枯葉の重なりに
いのちの熱を与えてやる時

一枚だけなら行き過ぎる
しゃがんで目を凝らす一回転してみる
三枚四枚五枚 はかなく羽は散っていた
付け根を下に先っぽを美人の眉みたく
美しくそよがせていた

耳を澄ませばちいちいちい ぴいぴいぴい
地鳴きとさえずりが楽しく聞こえる
生きる喜びに溢れてる
木々の花は終わり雨はたっぷり降った
新芽は風に撫ぜられ空に歌う

カラスかキツネかタヌキかイタチか
羽五枚で僕には判るドラマが判る
可憐な野の鳥にも訪れる死
お前は幸せな一生だったかい
美しい羽を五枚ポケットにしまった

僕は空を見る雲を見る
クヌギのざらざらを叩いて
ばんばんばん 可憐な小鳥の消滅を
空と雲と風とそして僕とが
心を込めて弔ってあげる


( 評 )
 詩を読んだ、 と思う。

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