詩 市民文芸作品入選集
選者詠

吹雪
谷川 文子

雪が飛ぶ
北から南へ 水平に飛ぶ
木も草もぢっと耐えている
巾の広いばらんの葉は
雪を乗せて重たげに
うなだれたまま耐えている
 わたしはつぶやく
 しんぼうしておいで
 そのうち春が来る
この国に吹雪が荒れた日があった
お国のため
天皇陛下のため
東洋平和のため 吹雪がわめく
若者は吹雪の中へ消えて行った
立派に死んで来ますと云った
 吹雪よ返せ
 消えてしまった青春を返せ


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