詩 市民文芸作品入選集
選者詠

スクールガード
石内 秀典

こんなに晴れ渡った五月
街の入り口に
私は悲しく立っている

身体よりも大きいランドセル
の少女は
黄色い帽子をかむり
「おかえり」
という言葉に
にっと笑って
摘んできた
花をくれた

この春から
通学路のところどころに
“子供見守隊”として
私達は立つようになった

子どもたちは
走ったり座ったりしながら
ゆっくり帰ってくる
遠くに姿が見えたが
またそばの公園に入っていった一団がいる
しばらくは帰ってはくるまい

汗をかきながら
六年生がまっすぐ
坂道を上がってくる頃には
漸くこの街の小学生は
家に帰ったことになる

私の小さな安堵とともに
街はゆっくりと
夕餉の支度にはいる


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