詩 市民文芸作品入選集
特選

詩を煮る
正法寺町 井 豊

こころが沈む日は
ふるさとの山野から
おもい山草を摘んできて
素焼きの土鍋で煮てみましょう

香辛料はいりません
ふるさとは
ほのかな香りが漂っているのだから

こうして コトコトと
詩を煮つめているのです
少しこころの弾む日は
透明な鍋で
スープ仕立てにしましょうか

ゆうぐれの
ぶどう色したエーゲ海
クレタ島のオリーブと
古い 古いワインを一滴入れたなら
ミノア文明の味がするでしょうか
どんな材料を使ったら
詩の旨味が出るのでしょう
胸の火に
時空の鍋をかけて
今日も 考えているのです


( 評 )
 四連目の外国の風景が詩の内容によくこなされ全体と調和している。題名もいいし終連に若さを感じ新鮮な詩の香りを知る。

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