<総評>
本年も、昨年とほぼ同数の二四七句の出句をいただき、誠に有り難く、愛好者の意欲と情熱に敬意を表しますと共に、重責の深さを痛感いたし心より謝意申し上げます。今回も皆様からの投句を、改めて名を伏せ、作成し直された小冊子をもとに、古株、西村両先生と不肖私の三名で精魂こめて選に当たらせていただきました。総体的に、年々優れた句が多い中、選規遵奉の内、特選、入選、佳作と合わせて四十四句の抜萃となり、これは全句数の十八%にも満たない窄き門であり、従って寸陰の差で選外となった作品がかなりの数にのぼるという辛苦の厳選でありました。いつもながら豊潤老練の方々は、よくよくご存じでございますが、初心者の方もかなりいらっしゃると存じますので、浅慮ながら、先師から教え聞かさしていただいたことを申し上げます。冠句は季語、季節等にこだわることなく、自由吟ではありますが、まず冠題の五文字を、角度を変えよく吟味して充分かみしめてから自由自在に解釈し、それにふさわしい事柄や場面を新しく興して、心の中の気持ちや、風景の楽しさ、また身の周りで見つけたおもしろいことがらを、ひとつの絵や詩のように言いあらわし、胸に残るような心打たれるような感動表現で、「中七、下五の十二文字」にまとめる短い楽しい心の詩です。只冠題にすぐ接続しない、標語調にならないようにこころがけて、創作心は高く深くやさしく……。どうぞ句友の皆さん、選外の方も紙ひとえ、めげることなく、来年もこぞってご応募くださる事をお願い申しあげ拙いペンを置かしていただきます。
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