詩 市民文芸作品入選集
 入 選 

ふと フォト すれば
西今町 やまかみまさよ

ふと
足元に 目をおとす
いつも通いなじんできた
畑につづくアスファルトの道端に
みなれた タンポポの葉
その葉先から 素直にのびた
こぼれるほどの黄色の夢 ひとむれ
いつか どこかへ
飛んでゆけそうな 気配

ふと
中空を みはるかす
建てこんだ家々の屋根と
すこし たるんだ電線のむこう
せばめられた空に
一本の 白いすじ雲 あれは
西にむかって旅するものの メッセージか
春はまだ 浅くて

ふと
聞こえてくるのは 何?
鈴なりになった馬酔木の木に
立ちよったのは 蜂でなく
ヒトビトの ――
白い小粒の花々の まわりで
届くかぎり はなっているものは
むかし むかしの
ハナシ かもしれない。


( 評 )
充分な推考と熟練を思わせます。
「一本の白いすじ雲、あれは西にむかって旅するもののメッセージか」が、固体になりそうな作品の息抜きになりました。

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