月夜柿
村はずれにいつ頃から植えられたのか大きな柿の木があった
四十年もの前この柿の木のあたりで
満月が近づくと月のあかりで
若者達が集って運動会の練習をした
汗ばんだ肌には
細く流れる風はここちよく
のどの渇きを柿をもぎとって口にした
満月に照らされた柿の実は
青い柿も 赤い柿も
今宵だけはとろける甘さになる
月が欠けると
少しづつ甘みが抜けもとの渋さにもどる
若者達はその甘さに酔っていた
満月の日ふるさとに帰った
月あかりに皓々と照らされた柿の木があった
大木で鈴なりになったこの木も
自然なふりして
わずかな間に年老いてしまった
木の枝先に数えるほどの柿の実があった
今宵もさぞ甘かろう
いつの間にか年を重ねてしまった私に
しみついたしぶを
ぎゅっと絞ってぬぐい去りたい
月の満ちているまに
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