かりそめに
時を違わぬ桜の花
ぼんやり眺める花々の濃淡
ふっとあなたの視線を感じて
思わず一輪に焦点を合わせる
もうこんな場面で
あなたに会うはずはないのに
心のぶつかり合いや無視
笑いと涙で共に超えたピーク
大きな失策を庇ってもらった借り
花を持たせてあげた貸し
おたがいに手堅いライバルとして
牽制しつづけた数年
その日のあなたはいつになく
心を開いてくれたのに
あふれそうな言葉を呑み込んで
軽やかに別れたのは
街角で「やあ」っと笑ってすれちがう
たやすい再開を疑わなかったから
秋風の立つ朝何の前触れもなく
あなたは人生のゴールに疾走して行った
独り勝ちのあなた
生き残って認める私の敗北
言わず終いの優しい言葉を抱いて
花の中にあなたを探している私
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