追憶
最後に会ったとき君は
「今度帰るのは白木の箱や」と
ことも無げに言った
私はどきりとして返す言葉も出なかった
十六歳で海軍予科練に志願し
軍国少年がみんな憧れた
飛行機乗りとなった君は
すでに戦死を覚悟し
別れを告げに来たのではなかったか
一年後の南方戦線で
空中戦の花と散り
小さな骨箱に入って帰還したが
君は少しの悔いもなく
思い残すこともなく
若い命を国に捧げたのか
君にも輝かしい未来はあっただろうに
幼なじみの君と
一緒に撮った写真は
すっかりセピア色に変った
君が若し生きていて
ひょっこり訪ねて来たなら
どんな親父顔で
過去を語ってくれるのだろう
今はもう還ることもない
はるかな日の君の面影が
走馬灯のように蘇って
詮無いことを今日も思う
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