詩 市民文芸作品入選集
入 選

春の雨に
芹町 松本 文

ペチャペチャ ペチャペチャ
おしゃべりの輪が
広がっては ぶつかり

ぶつかっては こわれて
 消えてゆく

駐車場の水たまりに
細かい雨粒の波紋が
つぎから次へと ゆれている

垣根の向こうに降る雨は
やさしく彩る春色を地に秘め
芽吹きのエネルギーを
 蓄えているのか
凍えたままの グレーの土を
ムック ムックと盛り上げている
まるで
打ち直したばかりの蒲団のように
 やさしく あたたかく−

今朝
静かに
そして
ふくよかに

そうっ と
 春の雨


( 評 )
作者の春を待つ気持ちが雨の跳ねる様とともに読者に伝わってくる。第一連から始まるうきうきしたリズムがこころよい。春を淡彩でなぞったという趣である。

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