詩 市民文芸作品入選集
特 選

春を待って
西今町 やまかみまさよ

寒肥を施されて 早生たまねぎが
白いうなじをすくめるように
ちょっとふるえながら
健気なはこべと 寒風の中でうわさ話

近隣になわばりを持つ からすが
うちの畑に舞い降りた、という
やわらかく重なりはじめた無口なきゃべつが
つつかれ はじけて 悲鳴をあげている、と

ニンゲンの眼で おどしをかけても
ササタケの剣を さしこんでみても
光る紙テープを ちらつかせても
からすは めげずに通ってくる

黙々と 草むしりしているわたしの
凍えた指先のしびれも
うわさ話も 悲鳴も 羽音も
ひとふきのつむじ風にかき消され

数日前の
ぬかるんで残った足跡が
霜柱と一緒になって 立っている
二月の畑はまだ こわばったまま


( 評 )
春を待つ作物たちの会話が新鮮である。惜しむらくは「草むしりしているわたし」とたまねぎなどの彼女(?)たちとの位置関係がややわかりづらい。整理が出来るともっと良くなるだろう。

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