詩 市民文芸作品入選集
入選

甘呂町 近藤 昌子

 僕が僕にできる事に
 こだわっていたあの頃
 普通を語る君を 淋しく思った
 何にでも成れると 信じていた
 あの幼い頃を過ぎて
 何にも成れない自分が
 ここに 立ちすくんでいた
だけど
 宙に包まれ
 風に包まれ
 雨に包まれ
 闇に包まれ
 陽に包まれ
 全てに包まれていると気づいた時
 僕もまた
 包む側の一片ピースだと やっとわかった
 僕は
 花であり
 魚であり
 君であり
 テレビに映る犯罪者でもある
 全てが
 僕であったことも やっと気づいた
 今
 少しガタがきたけど
 この動く両手足と
 少し見にくくなったけど
 まだまだ充分なこの眼と
 おしゃべり好きな この唇と
 不自由をしない耳を持つ
 この器を使い
さて
 何が できる

何を 始めようか


( 評 )
 ともすると平板に流れると思えるテーマだが、平易な言葉で“今”の自分を分析している。リズム感もいいし私たちが必ずぶつかる問題にあっけらかんと立ち向かっている姿に好感が持てる。

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