峠にて
山に囲まれて
静まり返る街は
雪がうっすらと家々の屋根を被っていた
古い農家を
新興の瀟洒な家々が取り囲み
まるでくすんだ
がくあじさいの花のように見える
恩師の葬儀からの帰り
峠道から振り返る街は
家々が寄り添うようにつづき
人々の暮らしの匂いは
ここまでは来ないが
水底のように
静かだ
こんな隔離されたような街では
新しくやって来た人たちと
旧来の生活を守る人たちの間で
いつも緊張が続いた
先生はいつもその真中にいた
先生の微笑みは静かだった
家人は
見知らぬ多くの参列者に
頭を下げた
幾たびも越えたこの峠を
私はもはや訪れないだろう
雪に沈む街は
私の視界から消えた |