詩 市民文芸作品入選集
選者詠

風 花
宇田 良子

軽ろやかに落ちてくる

小さいのやら
大きいのやら ふあふあと
それは空をはなれるとき生まれ
風の心にそって
舞いおりながら
或るときは二度三度と舞い上がり
あらためて下りてきて
地に消える

風花が舞い上がるとき
それは私の春であったり
子供たちを育てつづけた
あの目まぐるしい時であったり
家族が
私の視野の中にいた頃であったり
遠い日を眼に遊ばせるのだが

ふり返る時間はやわらかく
すぎ去った時間は短い

あわい雪は
目の前でかたい土に消える
そこに何があるのか


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