詩 市民文芸作品入選集
入選

おやすみヒツジ
西今町 やまかみ まさよ

介護を終えて帰る夜道
冬のオリオンが
凍てつきはじめたフロントガラスに映える

道中には二つの橋が架かっていて
一つ目を越えると町名が
二つ目をこえると市名が変わる

景色も 人の心もどんどん変わる
変わらず位置する星座さえ
巡る季節で変化する

布団の中で帰る道を案ずる母へ
―今夜は星明かりやから
  心配せんでも ええよ
眠りの浅いのは 相変わらずで
うたた寝の母は今宵
何匹のヒツジを数えるだろうか。


( 評 )
 母の介護を終えて帰る道すがらの冬夜の描写が印象的だ。過ぎていく距離と時間は、作者が介護にかけてきた距離と時間でもあるのだろう。変わらないものは母と子の愛情。

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