詩 市民文芸作品入選集
入選

Possession
東近江市 寺田 由紀子

俺たち離れて暮らすことになるけど
いつか時間がとれたら
また寄り添って同じ月を眺めていたいな…
(別れ際にあなたが私に託した指輪には
     “K possession”と彫られていた)

紅玉に息を吹きかけ磨く
つややかな紅玉にナイフをいれて
皮をするする剥いていく
ナイフで皮を剥いていくと
うすたまご色の肌があらわになる
細い皮はゆらゆら
切らないように
きれないように
慎重に紅玉をまわしていく

紅玉を7回まわしたときに
ナイフは私の指輪をかすった
紅玉は皮と果肉に別けられ
緋色の皮は土星の輪のように
紅玉のまわりをまわっている
皮を剥がれた紅玉は
あなたと見たあのころの月に似ていた

※(possession 所有)


( 評 )
 possession(占有)という題名をめぐって、ドラマチックな作品に構成されている。登場する林檎とナイフの関係もミステリアスで斬新。

もどる