初冬の森へ
クヌギ コナラ エゴノキ
一面の落ち葉が
重なり絡まりあっている場所の
もうすぐ消えてしまおうとするものを
私は
ひそかに踏みつけているのかもしれない
いのちの最後のぬくもりの
いくつかの想い出のようなもの
ずっと前に
私は胸に細い月を抱いていた時があった
片方の耳がいつも虚ろで
森の夜をふるえながら帰った
内側から私を照らして
満ちたり欠けたりしていた月の淋しさは
何の速度で
満ちたり欠けたりしたのだろう
夜生まれて開き
ひかり始めるものたちと共有した秘密は
答えを持たない私の体のなかを
透きとおった一匹の魚になって泳ぎまわり
どこへともなく去って行った
私は深い息をして
朽葉〔くちば〕のやわらかいぬくもりを踏んで歩く |