加齢の子守唄
まわりのざわめきに
気付かなかった音
いつからか 夜毎
旋律をもたない 音を奏でている
この音
故郷へもどる先輩を
見送った 飛行機の音
思いを伝えられず
味わった甘酸っぱい あの音
この音
残業する私を
照らしていた 蛍光灯の音
かかえきれない仕事に
苛立って聞いた ジィーという音
この音
里の裏山から ふりそそいでいた蝉時雨
イヤ
実家の脇 大川の落差の水音
耳の奥の音をたどり
息をひそめ 思いをめぐらす
無重力空間
音のない静かな時を
思い出せないまま
今宵も いつしか 夢路へ
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