詩 市民文芸作品入選集
入選

雪晴れに
正法寺町 井 豊

畑の雪はまだ積もったままだ
雲間から今日の日ざしが降りそそぐ
全てのものが光にまみれる
静寂をつらぬいて
光背のように眩しい

かき氷になった
ほうれん草の雪を払う
寒さで丈は伸びず
葉は重なりながら
日の恵を受け 競い合っている
潮騒の音を聴いているのかもしれない
耳の形をしている

籾殻や堆肥も入れている
雪が半分とけて
土の具合はほど良い
かじかんだ手で
根元から ゆっくりと引っぱる
すくーっと抜けた

根っ子は仄かに赤く
一月の空に映えた
葉も茎も根も
みんな頂こう

(この 赤いとこが甘かもんねー)
ひかりのむこうで声がした


( 評 )
 雪の積もった畑に新鮮な緑のほうれん草が顔を出す。雪晴れの陽光に映えて収穫する作者の満足げな様子が伺える。潮騒はやや唐突に思うがイメージを膨らませている。

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