詩 市民文芸作品入選集
入選

命のいち面
普光寺町 寺田 源三

花屋さんから買って来て
もう七年そのまんまの鉢で
年々可憐な花を楽しませてくれる
シクラメンの香りはと歌っている様に
仄かに甘く心の底までゆする

厨の出窓は太陽が春秋覗く
多彩なメニューを見つめ匂ってるか
窓を開けては美味しい風を入れる
時たま水が欲しいとお辞儀をするね
冬の寒さもシクラメンが温もりくれる

隣りにはサボテンや紫の花の野草
切花も畑から切り飾っている
夏は毎日水を替えなければだめ
新入りのシクラメンは遠慮してか
なに堂々とした花だよ

厨は暮しの拠点であり
笑顔の生まれる楽園だ
耳の遠くなった此頃よく問い正す
目は確かでハイウエイの車も見える

二千日も育っているシクラメン
自分も負けるわけには行かない
お互に保証のない世に
生きてゆくのは面白く難しい・・・・


( 評 )
 厨房に置かれたシクラメンとの対話、作者の優しい心が伝わってくる。もう少し整理されるともっと良くなると思う。ただ終行の二行は面白い。

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