詩 市民文芸作品入選集
選者詩

老春譜
竹内 正企

少年時代に吹いていたハーモニカを
老人クラブの宴席で吹いてみた
哀愁に染みた音色が甦ってきた

昭和二十年代が青春独身時代だった
「白い花の咲く頃」「水色のワルツ」
「北上夜曲」「山のロザリヤ」
などの 叙情歌を吹いていた

人前で話をすることは不得手だが
カラオケなら唄えるようになった
「哀愁の街に霧が降る」「霧子のタンゴ」
「夜霧よ 今夜も有難う」
何故か霧のつく歌が十八番になっている

ハーモニカは小さい楽器だ
ポケットに入いるオーケストラと言われ
名人のCDを聞きながら
勘をたよりに我流で吹いている

何処まで吹けるか 唄えるか
八十路の老春を謳歌している。


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