青の世界
微動だもせず
暮れ残る夕刻のような
絵画をながめていた
静かな時をそのままに すべて青
色あいがないようで ある 青
月のみ
わずかな光をはなつように
ほの白く浮びあがっている
音のない 心地良さにつつまれ
どこかで出会った風景と
思いがよぎった時
忘れていた 幼い日の雨の夕暮れ
父と並んで 窓ごしに眺めていた
世界が そこにあった
ボオッーと
うすオレンジ色の
不確かな球体が
ゆるやかに波うち
進んでいく
「あれ 何」
指差し問う手を押さえ
「見るんじゃない」と
父が あったかな手で
目隠ししてくれた
あの時の 青の世界
時空をこえた力で いざなわれ
摩訶不思議な記憶を
呼びさましてくれた絵画
青が神秘さを増したよう
静寂さだけが
辺りを つつんでいる
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