星繰り
(ねむりなさい)
胸の中にあふれようとする夜のきらめき
首をめぐらしてうなずきながら
星繰りが遠くから引きよせる星の野を掌に受ける
(おしえてあげる)
新しい星が繰り出されるたび
幼獣の影や ほどけていく抱擁
燃えつきる風信や 消えながら届く透蚕
わたしたちは
さまざまな不思議のかさなりに眼をみはる
歳月は星の野に沈み
星繰りは
老いた懐から肉の落ちた脛にむけてまっすぐに
しずかな無聊をふりそそぐ
(ほんとうにぶきように)
(さびしそうに)
わたしたちはしだいに眼をつむり
この世に苦しいことはなにもなく
悲しいことは一度も生まれず
夜は夜の箱の中へ
星は星の軌道へ
ゆっくりと終われたことを知る
(ねむりなさい)
痛ましいことはどこにも生まれず
間違った道はなく
肩越しに
振り返る墓碑銘が
低い声で記されたことを知る
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