窓
私は
おまえをこの世に送り出す
ひとつの窓に過ぎなかったのだから
おまえが
いつどんな開け方で
その窓から
飛び立って行ったところで
それは
それだけのことなのだろう
おまえはどこに居ても
その木の手触りペンキの匂い
あの日そこから漏れていた明かりの色を
ふと甦るように想い起こす
それは
それだけでいいのだろう
おまえがその窓辺を懐かしく想う頃には
たぶんその窓は跡形もなくなっていて
何年もの月日のあとで
ここに窓があった
ただそれだけの
ひとつの記憶
そしてまた
おまえはおまえの窓をつくる
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