詩 市民文芸作品入選集
入選

猫の穴
東近江市  辰巳 友佳子

外飼いしている猫たちのほとんどは
私の見えるところで死を待つ

真横に伸びきった身体に
痙攣が起き
瞳は一点を見遣り
四肢はくうを駆ける
一瞬 ぐっっ と腑に響く音

死の淵に入りはじめたのか
そのものに宿っていた寄生虫が
いっせいに這い出てくる
ノミかダニか
黒い影が波のようなうねりとなって
四方八方に蠢いて去っていく

一連の死の儀式に
立ち会わされ
そうして私は
裏庭に小さな穴を掘り続ける


( 評 )
 猫の死に至る細部を見つめるまなざしは鋭い。最終行の淡々とした一行「裏庭に小さな穴を掘り続ける」から作者のやり場のない気持ちが伝わってきます。

もどる