詩 市民文芸作品入選集
選者詩

挽臼
竹内 正企

挽臼は生活の必需品だった
凸凹の石が重なり擂り合わせ
擦りあわせて粉を生みだした

女臼は受身の尻臼で動かぬ
雄臼は穴へ殻物を少量落しつつ
それを左廻りの臼で粉に挽く

粉は湯で捏ねられ丸められ蒸される
手間暇かけて だんごにされた
花よりだんごと 手間を味わった

挽臼の片われが漬物石になった
"おまえは どちらの石なのか"
凹みに垢ためた なき臼だった

片われは何処にいるのか
限界集落の 朽ち果てた
屋敷の跡に 埋もれている


もどる