宿り木
南にむかってさざなみ街道をあるく
大きな川の 橋のたもとには
祈りのかたちをした一本の樹が佇む
他よりひときわ梢をひろげ
ひとり一人のうちあけ話を
しんみりときいているような姿勢して
まわり道して
わたしはいつも抱かれにくる
誰にもうちあけなかった胸のうちを
大樹によりかかってつぶやくとき
まるくておだやかな
ひとふさのくす珠になってゆくのがわかる
私の思いをわかってくれた気配に安心し
いつもの梢の枝先に
またね のキスを送って帰る
ひくくおもたい冬空の下
芽吹きかけてはいても
つん とすまして立つ河辺林はいつまでも
気がつかない素振りのままなのに
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