<総評>
文学離れが言われている昨今ですが、今年度は応募者、作品数とも昨年より増えただけでなく、完成度の高い詩が多く見られました。
私たちは日々言葉で様々なことを伝えあい、分かり合おうとしています。そして、詩における伝達は、出来事や思いを伝える一般的な言葉からもう一歩深く踏み込んで、人間という複雑で捉えがたい存在をも伝える表現ができれば理想だと思います。上位の入賞者は、そういう点でも優れていたように感じました。スイスの言語学者ソシュールは言葉をラング(社会システムの言語)とパロール(個人的な発話)に分けましたが、読むことで「永遠に触れた!」と感じられるような瞬間を見せてくれるパロール。それは難しい表現ではなく、ちょっとした物陰に隠れているような時もあります。
表現する意欲を持ち続け、冒険を恐れない新しい詩を書いてください。
(尾崎 与里子) |