春の
わたしたちは
魅惑するものとして生まれ
ゆうぐれの野に放たれた
軽いまま
眼をつむっていよう
この世はぶかっこうね
はじめての言葉は
はじめての知性を
はじめての官能で包み込み
瞳だけの声になる
春のユーラシアがそよぎ
熱狂する羽根が一枚
食卓の皿の上に載せられる
わたしたちは
草のようになにも持たず
のみちをゆき
世界のかぎりないいぶかしさや
煩わしい未来の白さを見た
時の中で
不均衡によみがえる半島を想い
しだいに暮れて見えなくなるその鳩尾に
孤独なゆびさきで触れ
種子のように零れるものとして
夜の中へ落ちた
春の
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