詩 市民文芸作品入選集
入選

ほくろ
池州町 真野 美栄子

色白の妹の頬に
芥子粒ほどの
なのに 目立つほくろ
時おり 私がつけた と
冷やかな目で なじる

おぼろげな記憶の中に
楽しげに 並んで 何か書いている
オカッパ頭の二人
いつしか ふざけ出し
横むいた妹の頬に
鉛筆を近づけ 名を呼んだ
チクッと 痛い目をさせたくて
ただ それだけ

でも 二人のへだたりは
計り知れない深さ
どんなに詫びても
なじる目差しは
年を重ねるごとに
鉛筆の芯のまま 心に刺る

色白の妹の頬の
小さな 小さな ほくろは
私の心の
大きな 大きな ほくろ

消せる
消しゴムは みつからない



( 評 )
 子どもの頃のちょっとした悪戯ごころが、一生の傷になってしまう。姉妹だからこそ一層微妙な屈折を招いてしまう心情が、短い展開の中でうまく表現されている。最終二行が効果的。

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