晩夏
蜻蛉の薄い羽根を 指先で そっとつまんで 顔をしかめて立っていた
ひとよ そのとおい夏 木漏れ日の道で 緑はあなたを包んだ
はるか向こうの山並にかかる 白い雲が わずかにもれあがるのを見ながら あなたは 立ち尽くしていた 頬を触るには あまりにも遠く
その後 一人寂れた停車場を発った
伝えられなかった 僕の左手