詩 市民文芸作品入選集
特選

女と砂糖と小豆と
東近江市 辰巳 友佳子

冷凍庫の中は
他家製の鮒ずし
干し柿、柚子の砂糖漬け
冷凍うどんに煮小豆・・・
煮小豆の袋には二〇〇七年とある


久しぶりにお善哉でも
小豆は砂糖食いだそうな
大匙一杯二杯入れ
塩も少々足してみた
甘くない
また一杯二杯


家で採れた小豆は大粒揃い
いつでも善哉が食べられるようにと
多めに煮ておいたものだったろうか
二〇〇七年という年
義妹が身ごもった年
私が不妊治療を止めた年

また一杯二杯
塩ももう少し
甘くない

二〇一三年の小豆を煮てみよう
今年の善哉は
うまかろうか



( 評 )

 女としてのひとつの希望の扉を閉めた二〇〇七年をキーワードに、三連目で息をのむ。淡々と取り出されていく冷凍庫の中身と、短い行数の中で甘さに濃厚な情念を絡めた構成が見事である。


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