女と砂糖と小豆と
冷凍庫の中は 他家製の鮒ずし 干し柿、柚子の砂糖漬け 冷凍うどんに煮小豆・・・ 煮小豆の袋には二〇〇七年とある 久しぶりにお善哉でも 小豆は砂糖食いだそうな 大匙一杯二杯入れ 塩も少々足してみた 甘くない また一杯二杯 家で採れた小豆は大粒揃い いつでも善哉が食べられるようにと 多めに煮ておいたものだったろうか 二〇〇七年という年 義妹が身ごもった年 私が不妊治療を止めた年 また一杯二杯 塩ももう少し 甘くない 二〇一三年の小豆を煮てみよう 今年の善哉は うまかろうか
女としてのひとつの希望の扉を閉めた二〇〇七年をキーワードに、三連目で息をのむ。淡々と取り出されていく冷凍庫の中身と、短い行数の中で甘さに濃厚な情念を絡めた構成が見事である。