応募者・作品ともに昨年より二割強の増加、短歌を詠もうとする意欲の盛り上がりをよろこびとする一方、その質の点では多少の疑問が残ります。
　二十一世紀に生きる〈私〉が主人公。この地球・宇宙の何を、どのような視点から、表現の方法は、等に立ち向かうことになります。その上感性を磨くこと、要は〈感じる心〉ということになります。
　歌人、石田比呂志氏は「短歌の五七五七七で言ってはいけないことが一つだけある。それはその作者がどうしても言いたいことである。それを嬉しい等を言ってしまうと一首をつまらない俗な歌にする。（読売新聞）」と述べています。
　短歌を詠む者の心すべき言葉です。
　さらに、辞書はいつも傍らに、メモ帳を携えて、もお忘れなく。
　みな様のご研鑚を期待しております。

　応募者が昨年より二十五名も増えたのはうれしい。然し、質的向上は見られたかというと首をかしげたくなる。いずこの大会も応募者は高齢者が多く、四十代五十代はきわめて少ない。自然と作品が暗くなったり、思い出になったり、生活の説明に流れたりするのは無理ないが、もう一度歌を作る意義を考えてみてほしい。余りきびしいことを言うと作れないと言われる。昨年の滋賀文学祭の短歌の応募者三〇六名、その中で七〇歳から七九歳が一番多く一二七名あった。こうした傾向をみると将来は明るくない。出られる人は出来るだけ歌会に出て、話を聞くと共に他人の作品を読むことも大切である。こもっている人の作品はのびない。又、一字一句を吟味し確認して全力を傾注してほしい。それが創作するものの苦であると同時に喜びでもある。安易な妥協をゆるさないという心構えを、常に念頭において佳い歌を作られるよう望んでいる。

　総じて饒舌である。矛盾したような言い方であるが、三十一文字という限られた中で、いろいろ語って、その上に結論や結論じみた事を言うので、余情に乏しいのである。よい歌だなと思って読んできても結句で主観的な言葉で括られるとまことに惜しい気がする。詠みたいポイントをしっかり把握し、出来るだけ具体的に詠って、安易に主観的な表現をしないことが大事であると思う。
　 「字余り、字足らず」に私は余り拘らないでいるが、言葉の調子、流れが不自然にならないことが条件である。気になる歌がいくつか見られた。
　なお、昨年に比し、新しい傾向の歌が目につくようになったのは嬉しいことである。