<総評>
文章を書くことは容易でない。が、それを押して書かざるを得ない熱い思いが応募作の中から伝わってくる。佳作の「弟よ」には病気で亡くなった弟への思いが切々と綴られ、「聞き染む」には受験生の微妙な心の動きが音楽を通して描写されている。
また「犠牲者」は会社の火事を契機に昭和三十年代の組合と会社側の状況が克明に描かれた作品である。「追憶」は題名の通り、同窓会に参加した主人公の様々な思いが展開されている。「未来に乾杯」は夢のような作品だが、その中に新しい主人公の歩みが仄かに感じられる。
昨年のおよそ2倍の応募者数があり、喜ばしいことである。それぞれの作品に今後の可能性が感じられ、今年だけでなく来年、発展した形で挑戦していただきたい。書くことは自分を客観的に見つめることでもあり、新たな自分の発見にもつながる。文章は書くことで進歩し、新たな世界が広がっていく。
(畑 裕子) |