<総 評>
魂のこもった三百余首に向き合っておりますと、個性豊かな作品、真実の声が漲る短歌、緊迫感を帯びる歌、なおその上に普遍性を備える作品の前では必ず心が佇みます。
同じ材料を詠まれていましても、その焦点化や言葉の斡旋、韻律の滑らかさなどによって、詩の質に相当の隔たりのあることも実感いたしました。
優れた作品を生むには、多少荒削りであっても、短歌的衝動はすぐにメモすること、即ち感覚の鮮度を大事にする、身辺を具にみる、さらには優れた作品にたくさん接する、などがあげられます。随分言い古された言葉ですが短歌の出発点はここより他にはありません。
一日一首を目指して皆様ご精進下さい。
木村光子
昨年より応募者は一名少なく、歌数は五首少なかったが、質的には向上していると思われる。結局歌とは何かということになるが、香川進は「生きるとは何か、自分とは何かをたづねることが短歌の原点である」という。私もつまるところ歌は自分の生き方、自分の生命をうたうことだと思っている。それはまた茂吉の言う「写生」につながるものである。最近はあちこちで、短歌大会があり、応募の機会は多い。自分の作品価値を問うために応募されるようすすめたい。要は説明的、記録的な「そうですか歌」にならないよう心して、「詩情」のある、「余韻」のある歌を作ってほしい。それには各入賞の作品をよく読んで、なぜよいのか追求してほしい。読むのも大切な勉強の一つであるからである。
小西久二郎 |
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